長谷川英祐『働かないアリに意義がある』
有名な話で、「働きアリにも2割は働かないアリがいる」という話がある。
アリのように繁殖を専門にする個体と労働を専門にする個体からなり、コロニーと呼ばれる集団をつくる生物を「真社会的生物」という。
そういう生物が大好きな人に読んでもらいたい本。
間違えるアリがいたほうが、効率の良いルートを見つけることがある。
これはアリの話だが、人間でもこれと同じことが言えるのではないか。
みんながみんなまじめな人間だと、迂回路やショートカットはいつまでたっても見つからないだろう。自分よりもできない人にイライラする人は、「自分よりもできない人=ダメな人」ではなく、「自分よりもできない人=自分が絶対に考え付かない近道を発見する人」としてリスペクトしたほうが良いと思う。
まじめな人が馬鹿をみるようで、非常に嫌な話だと思う。私も嫌だ。
だが、確かに言われていることはもっともである。
過労死するアリもいる。
働きすぎて過労死するアリがいる。
全てのアリがせっせと働いて、すべてのアリが過労死した場合、そのコロニーは絶滅してしまう。
過労死したアリが出た場合、そのコロニーが続いていくのは今まで働いていなかったアリである。
全員がまじめに働いてしまうと、人間の社会も続かない。
アリのことを語っているようで、実は人間の社会を語っている、味わい深い本である。