原田俊治『馬、この愛すべき動物のすべて』
馬は人間と生死を共にする唯一の家畜である
家畜化されても野生時代の繁殖シーズンに変化はないという野生を持ち続けていながら、人馬一体となって戦地に赴き、人とともに戦い人とともに死ぬ、という家畜。
他に類を見ない家畜のかたち。
それなのにたとえば子馬と母馬が引き離されて1週間するとお互いの顔を忘れるという不思議な知性も持つ。
嗅覚を頼りに自分の馬房に帰るくせに、草のにおいには嗅覚が効かず、トリカブトやドクニンジンなどを食べて死ぬことも多いという。
知れば知るほど不思議な動物で、つかみどころがなく茫洋としているくせにどこか気になるのが馬。
このコロナ災禍の下で、たくさんのスポーツがいくつも活動の縮小を余儀なくされた。
それなのに競馬だけは興行収入も8割ほどの低下で済み、ずっと営業し続けることができた。北海道のばんえい競馬はV字回復を見せているという。
全てのスポーツが鳴りを潜めたテレビで、馬だけが走っているというところに私は少し不思議な気分になる。