デヴィッド・フィッシャー『スエズ運河を消せ』
大好きな本だ。
誰が何と言っても、稀代の名作だと思う。
名作なのは本そのものではなく、この内容だ。
「戦場のマジシャン」と呼ばれた男がいた。
戦争に勝つ方法はたくさんあるが、ジャスパーという男はこんな方法で戦争に「勝たせた」。
- 攻撃の方向を変えさせること。
- 攻撃のタイミングを遅らせること。
- 偽のターゲットを攻撃させて弾薬を無駄遣いさせること。
こんなすてきな戦争回避があるだろうか。
選管の縮尺模型とガラス、鏡を組み合わせてイリュージョンを戦場に作り出してみたり、砂漠に完全に戦車の姿を消して見せたりする。
「ハムシン(砂漠のすさまじい嵐)が5日間吹き荒れたら妻を殺しても許されて、8日間吹き荒れたらラクダを殺しても許される」という過酷なことわざのある砂漠の真ん中で、それでも正気を失わずに生み出した奇策の数々。
表題にある「スエズ運河を消せ」だけでなく、「港を動かす」「戦艦を作る」「何もないところから戦車を出現させる」など…ジャスパーの家系は錬金術師の家系で、祖父は「現代マジックの父」と呼ばれている。
そんなサラブレッドが生み出した奇策の数々をぜひ味わってほしい。