岡田尊司『アスペルガー症候群』
諸説の多いアスペルガー症候群を、素人にもわかりやすくまとめた本。
この本は指導のポイントを知りたいために読んだのだが、ポイントがまとまっていてとても勉強になった。
お気に入りのことは苦手のあとに
良くない行動をしなかったときに褒める(しなかったとき、が重要!)
ごほうびは1回量は少なめで、積み重ねられるものがいい
などなど、別にアスペルガーでなくても子育てに役立つのではないか?というヒントがいっぱいだった。
最近大人にも増えているというが、それは今まで名前がついていなかったものに名前が付けられたから増えたんじゃないかと思ったりする。
特徴として一番「おおっ!」と思ったのが、
常同行動(同じ行動を反復すること)を人前で隠さない という特性がある
というところだ。
こういう癖があっても、無意識にか意識的にか、人前ではやめておこうと思うことが私たちにはあるんじゃないか。
それを隠すか隠さないかが社会生活で生きづらいと生きやすいを決めてしまうのか、と思った。
また、ぜひ7つのパーソナリティの章を読んで欲しい。
どれか、だれにも当てはまるタイプが絶対1つある。
そういうことを理解しておけば、アスペルガーの人に理解ができるんじゃないかなと思う。
そして、アスペルガーは症候群なので、万人に存在する。自分にもあるし。それが社会生活を送るうえで障害にならないから、「症候群」という名前がつかないだけの話。
そんなことを教えてくれる本だった。
加藤昌治『考具』
拡げて絞って、組み合わせる。
新企画を出すときに、仕事でいつも参考にさせていただいている。
特におすすめの技法がカラーバス。今日は赤だ!と決めて生活したり、外出したりすると今まで目に入らなかったものがどんどん目に入るようになる。
恥ずかしながら、毎日見ているお店の看板が何色なのか意識したことがなかったことに気づいたり、自然界にこの色ってめったにないんだ!ということに気づいたり。
意識を拡げて、どんどんアイデアを出して、それからいろいろと組み合わせたり順序を変えたりする。アイデアの部分が出ないんだよ!という人におすすめです。
どこかへ行かなければアイデアがわかない、というのではなく、大ヒットのネタは意外に身近にあったりするものです。
大平一枝『もう、ビニール傘は買わない』
ここは山だ、何も買えない と思おう。
ただ単に節約本かと思って手に取ったが、ちょっと面白い表現がたくさんちりばめられていて、得をした感じがした。
「木こりになったつもりで水筒を持とう」もそれ。
ジャムは季節の終わりに作ろうとか、おやつは自分で作ろうとかの記述に交じって急に「ここは山だ」と言われると、あー、山ね!そうだよね、買えないね!と心が盛り上がる。
きちんと準備をしよう、という記述はありきたりだが、「ここは山だ」と言われると、すんなり心に入ってくる。
普段節約本はちょっとね、の人も、表現のバリエーションを勉強するつもりで読むとちょっと面白い発見がある。
ちなみに私は、まだいろいろな余計な買い物をしがちである。この本の内容は面白かったけれどまだ体に沁みていなくて残念である。
途中から表現の面白さにフォーカスしすぎたためかもしれない。
たけながかずこ『もっと子どもとうまくいく!働くお母さんの習慣術』
「ばっかり食べ」は大人だっていけない。
ここでいう「ばっかり食べ」は、「仕事ばっかり」「家事・育児ばっかり」という状態のこと。子どもと仕事、趣味などのライフワークをどれもゼロにならないように調整していくのが良い、という。
育児がゼロになればネグレクトになってしまうし、家事がゼロになれば家庭運営に支障をきたす。ライフワークがゼロになれば、楽しいことがなくなってしまうのでがんばれなくなる。
子育て中のお母さんはほんとにほんとに忙しいから、この3つの輪を同じ大きさにする事は難しいけれど、頑張ってゼロにしないこと。子育てが一段落する今から10年後に、きっといいことがある。
勝負顔のない主婦に仕事のチャンスは巡ってこない。
一番心に響いたのがこちらの言葉。
勝負顔とは、おそらく生活につかれていない顔、いつでも自分のやりたいことを持っている顔だと思う。
一生育児が続くわけではない。
小さな習慣でも、それがたとえ週に1回しかできなかったとしても、これからの10年を継続していればきっとあなたの役に立つ。
子育て中のお母さんたち、あと10年したらきっとあなたはその小さな習慣の積み重ねの上に立っています。
原田俊治『馬、この愛すべき動物のすべて』
馬は人間と生死を共にする唯一の家畜である
家畜化されても野生時代の繁殖シーズンに変化はないという野生を持ち続けていながら、人馬一体となって戦地に赴き、人とともに戦い人とともに死ぬ、という家畜。
他に類を見ない家畜のかたち。
それなのにたとえば子馬と母馬が引き離されて1週間するとお互いの顔を忘れるという不思議な知性も持つ。
嗅覚を頼りに自分の馬房に帰るくせに、草のにおいには嗅覚が効かず、トリカブトやドクニンジンなどを食べて死ぬことも多いという。
知れば知るほど不思議な動物で、つかみどころがなく茫洋としているくせにどこか気になるのが馬。
このコロナ災禍の下で、たくさんのスポーツがいくつも活動の縮小を余儀なくされた。
それなのに競馬だけは興行収入も8割ほどの低下で済み、ずっと営業し続けることができた。北海道のばんえい競馬はV字回復を見せているという。
全てのスポーツが鳴りを潜めたテレビで、馬だけが走っているというところに私は少し不思議な気分になる。
デヴィッド・フィッシャー『スエズ運河を消せ』
大好きな本だ。
誰が何と言っても、稀代の名作だと思う。
名作なのは本そのものではなく、この内容だ。
「戦場のマジシャン」と呼ばれた男がいた。
戦争に勝つ方法はたくさんあるが、ジャスパーという男はこんな方法で戦争に「勝たせた」。
- 攻撃の方向を変えさせること。
- 攻撃のタイミングを遅らせること。
- 偽のターゲットを攻撃させて弾薬を無駄遣いさせること。
こんなすてきな戦争回避があるだろうか。
選管の縮尺模型とガラス、鏡を組み合わせてイリュージョンを戦場に作り出してみたり、砂漠に完全に戦車の姿を消して見せたりする。
「ハムシン(砂漠のすさまじい嵐)が5日間吹き荒れたら妻を殺しても許されて、8日間吹き荒れたらラクダを殺しても許される」という過酷なことわざのある砂漠の真ん中で、それでも正気を失わずに生み出した奇策の数々。
表題にある「スエズ運河を消せ」だけでなく、「港を動かす」「戦艦を作る」「何もないところから戦車を出現させる」など…ジャスパーの家系は錬金術師の家系で、祖父は「現代マジックの父」と呼ばれている。
そんなサラブレッドが生み出した奇策の数々をぜひ味わってほしい。
小林照幸『検疫官』
コロナが騒がれている今読むと、コロナというのは本当にバイオテロに近いものだと感じる。
生物兵器開発の10の条件
この本には生物兵器開発の10の条件が書いてある。
- 明らかな発病性があること。
- 罹患率が高く、適切な治療をしない場合に死亡率が高いこと。
- 症状の発症が遅れること。
- 診断・治療・汚染地域の土壌汚染が困難であること。
などなど、土壌汚染はまだわからないが当てはまるものがたくさんある。
感染症と診断されている患者は救急車にはのせてもらえない、と書いてあるが、今回のcovic-19はどうなのだろう。
炭そ菌の唯一の欠点は、人と人との間での接触感染がないことだった。
今回のcovic-19については、接触感染どころか飛沫感染、空気感染も。
日本は島国だが、今までたくさんの風土病に襲われてきた。一番最初と考えられているのは1822年のコレラの第1次流行(コレラはガンジス川流域の風土病である)。
ガンジス川からボルネオ、広東、北京を通って日本に伝播した。
第4次流行の時、横浜にはじめて検疫所が設置されている。
そんな歴史に思いをはせながらクイーンエリザベス号の新聞を読み返すと、時代が逆行してしまったような錯覚に襲われる。この錯覚はどこから生まれるものなのだろうか。